刑事裁判は弁護士なしでできるのか
1 弁護士なしでも基本的には刑事裁判を行うことはできる
刑事裁判は基本的に弁護士なしで行うことができますが、必要的弁護士事件では弁護士がいなければ刑事裁判を開くことができません(刑事訴訟法289条1項)。
必要的弁護士事件とは、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える拘禁刑に当たる事件」を指します。
必要的弁護事件において、弁護人が出廷しないときや弁護人が選任されていないときなどの場合、裁判所が職権で弁護人を選任することができます。
一方、必要的弁護士事件以外であれば、弁護士なしで刑事裁判を進めることができますが、弁護人なしで進めることにはいくつかデメリットがあります。
2 刑事事件で弁護人を付けない場合のデメリット
⑴ 刑事裁判に向けた準備が困難
刑事裁判では、検察から証拠の開示を受けてその内容を検討したり、自身に有利な証拠を収集してその提出方法を検討したり、綿密な事前準備が必要です。
弁護人をつけていない場合、これら準備は事実上難しいといえます。
⑵ 保釈請求が困難
起訴後に早期釈放を求めて保釈請求をすることができます。
しかし、身柄拘束中では外部との連絡は必ずしも容易でなく、身元引受人の確保や誓約書の提出は現実的に困難であるといえます。
また、法的知見がないと条文に照らし保釈されるべきことを説得的に論じるのは困難であるといえます。
⑶ 被害者対応が困難
被害者との間で示談が成立したり、謝罪を行ったりすることは、量刑を決める際の事情として考慮されますし、保釈請求した場合にも有利な事情として考慮されます。
しかし、被害者は加害者との直接的な接触を拒否することが多く、通常、弁護人がついていないと被害者対応ができません。
⑷ 外部との連絡が困難
身柄拘束されていると外部との連絡は容易でなく、また、接見禁止がついている場合には弁護人以外との者と面会を行うことができません。
そのため、弁護人がいないと外部との連絡が大きく制限されてしまいます。
3 刑事裁判では弁護士をつけた方がよい
弁護人なしで刑事裁判を進める場合には様々なデメリットが考えられるため、弁護人をつけた上で刑事裁判に臨んだ方がよいといえます。
刑事裁判を控えている場合には、お早めに弁護士に相談されることをおすすめします。
刑事事件にはどのような種類があるのか
1 刑事事件の種類
刑事事件とは、刑法などの法律で定められた犯罪行為に対して、処罰を科す手続きのことをいいます。
刑事事件には大きく、①刑法犯と②特別法犯とに分類されます。
①刑法犯
刑法犯とは、「刑法」に規定された犯罪を行い、その罪に従って処分される犯罪のことをいいます。
②特別法犯
特別法犯とは、「刑法」以外の法律に規定された犯罪を行い、その罪に従って処分される犯罪のことをいいます。
ここでいう「刑法」以外の法律とは、例えば、道路交通法や、盗犯等処罰に関する法律、暴力行為等処罰に関する法律、覚醒剤取締法などが該当します。
2 刑法犯の種類・分類
⑴ 警察庁における区分
刑法犯について、警察庁では、以下の6種に分類しています。
①凶悪犯
殺人、強盗、放火、不同意性交
②粗暴犯
暴行、傷害、脅迫、恐喝、凶器準備集合
窃盗犯
窃盗
④知能犯
詐欺、横領(占有離脱物横領を除く)、偽造、汚職、背任
⑤風俗犯
賭博、わいせつ
⑥その他の刑法犯
公務執行妨害、住居侵入、逮捕監禁、器物損壊、占有離脱物横領など、上記①~⑤に掲げる以外の刑法犯
⑵ 被害の対象から見た場合の分類
①人の生命、身体、自由、名誉等に関する罪
上記警察庁分類の①、②
わいせつ、逮捕監禁、住居侵入
②財産に関する罪
上記警察庁分類の③、④
占有離脱物横領、器物損害を含み、偽造、汚職、あっせん利得を除く
③公共の秩序や安全、国家の存立や作用に関する罪
偽造、汚職、あっせん利得、公務執行妨害等
3 特別法犯
特別法犯については、その処罰規定が設けられる法律や条例が、年々増加していることもあり、元々種類が多いため、分類は困難です。
ただ、検挙されるのが多い種類としては、道路交通法違反、銃刀法違反、迷惑条例防止法違反、覚醒剤取締法違反などの薬物事犯、出管法違反などを挙げることができます。
ただ、上記しましたとおり、特別法犯については、法律や条例が年々増加していることから、処罰される範囲が拡大している場合もあります。
そのため、日ごろからニュースや新聞などで、どのような行為が刑事事件の対象となるのか確認し、悩んだ場合には、弁護士に相談されることをおすすめします。